小説「指輪物語」の最初の一文はこちらです。
「この本は、主としてホビットのことを語っている」
え、指輪のことを語っているんじゃないの?と思いませんか?
もちろん、「指輪物語」はある一つの指輪を巡る壮大な物語です。
そして同時に、「ホビットとはどんな種族なのか」を語っている物語でもあるのです。
「指輪物語」では本編の前に、結構な長さの「序章」があります。
最初に紹介した一文は、実はこの「序章」の書き出しなのです。
序章に書いてあるのは主にホビットについて、その性質や歴史、社会秩序、他種族との交流の経緯などなど……
ビルボが指輪を手に入れるに至った経緯も、ゴクリとのやり取りを中心に書かれています。
わざわざ序章を設けて説明するほど大事な、「ホビットとはどういう種族か?」
今回はホビット族について、主に物語序盤から抜粋してまとめてみました。
ホビット族の外見は?身長、足が特徴的
ホビット族の外見的な特徴といえば、まずその身長です。
具体的には「2フィートから4フィート」。
1フィート=約30センチなので、身長約60センチ~120センチということになります。
体型については「大体が太るたち」、でも「動作はす早く機敏」です。
次に、大きく、靴をはいていない足。
ホビット族の髪は茶色の巻き毛で、足の裏も髪と同じ濃い巻き毛でおおわれています。
このため、ホビット族には靴が必要ありません。
そして顔つきについては「美しいというよりも人のよい顔立ち、幅広、目が明るく頬が赤い」。
ところで、ガンダルフがフロドについて形容するセリフがこちらです。
「一部のホビットたちよりは背が高く、大部分のホビットたちより色が白い」
「口と顎の間にくぼみがある。目もとの晴れやかないきのいいやつ」
映画のフロドがホビットらしくない、という声も一部ではあるようですね。
でも実際フロドは、ほかのホビットたちとは外見的に少し違うところがあったのです。
ホビット族が好きなことは?どんな家に住んでいるの?
ホビット族は陽気で、服も明るい色どりのもの、特に黄色と緑を好みました。
そして飲んだり食べたりすること、パーティや贈り物が大好きです。
食事は1日6回、しばしば軽い冗談で笑いながら、心ゆくまで楽しみます。
映画では、アラゴルンが同行することになり、ピピンがメリーに「食事はどうなる!?」と詰め寄る場面があります。
これはホビット族なら誰でも真っ先に確認したい点で、ピピンが特に食いしん坊というわけではありません。
贈り物に関しては「惜しげもなく人に与え、いそいそと人からもらった」とあります。
ところがこの贈り物は、しばしば彼らの家にあふれてしまいました。
映画に出てくるビルボの屋敷も、ものが多くてごちゃごちゃしていますよね。
このような「今すぐ使うあてはないけれど、捨ててしまう気にはなれないもの」は、マゾムと呼ばれました。
ところでホビットの家といえば、トンネルに丸いドアと窓がついているイメージだと思いますが……
実はビルボやフロドの時代、トンネルに住んでいるのは金持ちか貧乏人だけでした。
金持ちはトンネルがいくつも分岐した、スミアルと呼ばれる豪華な住まいを作りました。
そして最も貧しい者たちは、ただ土を掘っただけの穴を家としていたのです。
ビルボの家はもちろん、金持ちの豪華な方です。
「袋小路屋敷」と呼ばれたこのスミアルは特に、村では羨望の対象でした。
映画でも原作でも、ビルボと折り合いの悪い「サックビル=バギンス」という親戚が登場しますよね。
彼らはこの屋敷を手に入れたいがために、ビルボやフロドに難癖をつけてくるのです。
100年付き合っても驚かされる!?ホビット族の強さとは
ここまででご紹介した、普段の様子からは想像できない一面をホビット族は持っています。
それは、「いざというとき」に発揮される彼らの強さです。
それについては、ガンダルフもこう語ります。
「ホビットの暮らし方ぐらい一か月もあれば知り尽くせる」
「ところが、百年つき合ってみたって、いざという場合のホビットたちには驚かされるほかはないな」
ガンダルフを驚嘆させるホビット族の強さとはどのようなものなのでしょうか?
まず、ホビット族はいざとなると「そう易々とおどかされもせず、殺されもしなかった」。
また、「そうせざるを得なくなればご馳走なしでもやってゆける」ともあります。
そして「いざ窮地に立てば剛胆不適となり、必要とあれば武器を扱うすべを心得て」いました。
ホビット族は視力が鋭く弓を得意としますが、ただの石でも、投げて命中させることができます。
映画でも、ピピンやメリーが石を投げて戦う場面がありますね。
周りが剣や斧で戦っているのでなんだか見劣りしますが、これは十分に威力のある攻撃なのです。
指輪物語の原作・映画ともに、ガンダルフがホビット族を称賛する場面があります。
それはいざというときの彼らに、このような「芯の強さ」があるからです。
旅の間、指輪を所持する役割がホビットに与えられたのも、周囲がそれを認めたのも同じ理由なのでしょう。
おわりに
この記事は、「指輪物語」第一部「旅の仲間・上」から情報を抜粋しました。
初めにもご紹介したとおり、指輪物語はホビットについて語っている物語でもあります。
今回は物語序盤からご紹介しましたが、全編を通して「ホビットとはどういう種族か」を感じ取ることができます。
最後に「序章」からどうしてもお伝えしたい点をひとつ。
ホビット族は、今日では人間を見ると素早く身を隠してしまうので、発見するのは難しいそうです。
つまり、今でもホビット族は見つからないだけで、しっかり実在しているということになります……よね!