フロドを無能と呼ばないで!サムさえも誘惑される指輪の影響力とは

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映画「ロード・オブ・ザ・リング」を観た感想として、「フロドが無能」というのが少なくありません。

初めてこの感想を目にした私は「ぎょっ!」としましたが、内容を読んで、なるほどと思いました。

確かに映画を観た印象では、「フロドが無能」と思われてしまうのも仕方ないかもしれません。

対比されるのがサムで、こちらは「有能」「主人公」「かっこいい」!と称賛されます。

それはそれで嬉しいのですが、「それに比べてフロドは……」という流れになるのは悲しい。

みなさん、フロドは無能なんかじゃないんですよー!

フロドが指輪を手にしてから旅立つまで、実は〇〇年経っている

物語が続くにつれフロドが頼りなくなってしまうのは、指輪の影響です。

指輪は、持っている期間が長いほど、人格をむしばんでゆきます。

そして実は、フロドがビルボに指輪を譲られてから旅に出るまでは、結構な年数が経っています。

ビルボが指輪を手放し、フロドに譲ったのは、彼の誕生祝いでのことです。

この時ビルボは111歳、フロドは33歳でした。

そしてフロドが指輪の正体を知り、旅に出るのは50歳のことです。

フロドは旅に出た時点で、すでに17年指輪を所持しているのです。

しかもその間、フロドはずっと、指輪を肌身離さず持っていたようです。

原作を読むと、フロドはベルトから下げた鎖に指輪を留め、ズボンのポケットに入れていたことがわかります。

50歳になろうとするフロドにガンダルフは指輪の正体を明かしますが、その時すでに、フロドは指輪に魅入られつつありました。

フロドはガンダルフに指輪を手渡すのを渋ったり、ガンダルフが指輪を暖炉に投げ込むと驚き悲しんだりしています。

このように、旅に出た時点でフロドの心は、かなり指輪に支配されていたと考えられます。

ただし、以上は原作の設定のお話です。

映画では、誕生祝いからフロドの旅立ちまで、長い年月が経っているようには思えません。

それは、フロドを始めほかのホビットたちの外見がほとんど変わっていないからです。

指輪を持つと老いが進まないので、フロドの見た目が変わらないのは指輪の影響とも言えます。

しかし、サム、メリー、ピピンなどの外見もほぼ変わっていないんですよね……。

映画では、ここでどのくらいの時間が流れたのかはっきりとせず、私としてはもやもやする点ではあります。




エルロンドの会議で……見落としがちだけど決定的な違い

映画と原作の違いは多々ありますが、フロドへの指輪の影響という点で、私が注目するのはここです。

裂け谷で開催された、指輪の処遇を決めるエルロンドの会議でのシーンです。

映画では、ガンダルフに促されたフロドは、指輪を皆が注目する台の上に置きます。

つまりフロドは自分から、指輪を手放しているのです。

指輪を置いたフロドは、重荷から解放されてほっとしたように私には見えました。

しかし原作では、ここでフロドは指輪を台に置くことはしません。

原作ではガンダルフは、フロドにこう言います。

「指輪を高くさしあげて見せなさい!」

フロドは指輪を自分の手で持ったまま、会議の場にいた一同に見せるのです。

しかもこの時、フロドは指輪を皆に見せることに、強い抵抗を感じています。

ここからも、フロドへの指輪の影響が大きくなっていることがわかります。

またガンダルフも、フロドがもう自分の意志で指輪を手放せないことを知っていたのです。




サムも誘惑されていた?指輪の影響力の恐ろしさ

映画で称賛されるサムですが、彼もまた、指輪の影響からは無縁でいられませんでした。

原作には、サムも指輪に誘惑されているのがわかる描写があります。

モルドールへの旅の途中、フロドはシェロブ(大蜘蛛)に襲われて、仮死状態になります。

フロドが死んでしまったと思い込んだサムは、自分が使命を達成しようと、フロドから指輪を預かります。

この時から二人が再会するまではほんの1日程なのですが、この間、サムは指輪所持者となったのです。

フロドに指輪を返そうとしたサムの心境は、原作にはこうあります。

「サムは指輪を手放し、ふたたび主人に負わすのが何となくいやな気がしました。」

また、サムは「のろのろと指輪を引っ張り出」すなど、簡単に返そうとしません。

さらにサムはフロドに、この先指輪を持つのを時々替わろうか、という提案までします。

もちろんこれは、主人を思いやっての言葉ともとれます。

しかし根底に「指輪を手放したくない」という想いが感じられるのは私だけでしょうか……

結局、フロドはサムから指輪をひったくって取り返します。

しかもその時、フロドはサムを「盗っ人」呼ばわりまでします。

指輪がかかわると人格が変わってしまう、この緊張感は映画でもよくわかりますよね。




おわりに

この記事は、「指輪物語」の以下の章を参考に作成しました。

・第一部「旅の仲間」上・2「過去の影」、下・2「エルロンドの会議」

・第三部「王の帰還」下・1「キリス・ウンゴルの塔」

さて、指輪所持者になったことにより、サムの人生にはあることが運命づけられてしまいました。

彼が指輪所持者になったのはほんのわずかな間ですが、それでもその運命からは逃れられません。

ここにも私は、滅びてもなお人生を変えてしまう指輪の恐ろしさを感じるのです。

メインストーリー後のサムの人生については、指輪物語「追補編」を読むとわかります。

「指輪の仲間に関するその後の出来事」として、年表の形で載っています。

簡潔な記述ですが、主要な登場人物についてなので、イメージが広がって楽しめると思いますよ!

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