【注意】本記事はAmazonPrimevideoで公開中のドラマ「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪 シーズン1」のネタバレを含みます。
ガラドリエルが怖い!
ガラドリエルはよく「怖い」と言われます。
印象的なのは、映画「ロード・オブ・ザ・リング」第一部の水鏡のシーンでしょう。
フロドに水鏡を見せ、その後指輪を手にして支配者になると口にします。
ドラマ「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」でも、ガラドリエルはサウロン追跡に異様な執念を見せます。
また、自分の意見を押し通す強引さなどは、映画とは違った怖さがあります。
原作での彼女は、どのように描かれているのでしょうか?
筆者は「指輪物語」や「シルマリルの物語」を読み、映画やドラマの怖いガラドリエルが、決して創作ではないと思いました。
「指輪物語」の怖いガラドリエル
映画「ロード・オブ・ザ・リング」での怖いガラドリエルといえば、なんといっても第一部の水鏡の場面です。
現在・過去・未来を映し出すという水鏡をフロドに見せ、指輪を滅ぼす使命の重要さを説くガラドリエル。
その後、指輪を差し出すフロドを前に、自らが支配者になると宣言します。
その時のガラドリエルは、声が低く響き、周囲が暗くなって彼女自身から光が発せられるように見えます。
ガラドリエルの「怖い」という印象は、この演出の影響が大きいでしょう。
「指輪物語」にも、フロドが水鏡を見る場面は詳細に描かれています。
その後の怖いガラドリエルについても、映画の創作が大きいかと思いきやそうでもありません。
ガラドリエルは指輪を手にして、自らが強大な存在となると口にします。
その時の彼女の外見の変化も、映画の演出と同じような描写です。
また、フロド目線の記述を一部ご紹介すると、
「かの女の姿は今や測りがたいほど高く、耐えがたいほど美しく、戦慄すべき恐ろしさとともに、あがむべき尊厳さを備えていました」
とのことです。
そしてその後、ガラドリエルが口にする「試練に勝った!」というセリフ。
以前「ガラドリエルの試練」について記事を書きましたが、「シルマリルの物語」を読んで、この「試練」についての新たな視点を得ました。
ガラドリエルの試練について(過去記事)はこちら
「シルマリルの物語」に見る怖いガラドリエル
ドラマが始まったのに合わせて「シルマリルの物語」を読み始めたのですが、ガラドリエルについて興味深い記述を見つけました。
水鏡のシーンのような怖い様子の描写ではないのですが、彼女の「怖さ」の大元となる気質が表現されていると思います。
それは、モルゴスを追ってエルフたちが中つ国へ渡ろうとしたときの話です。
ヴァリノールにいたエルフたちは、皆が中つ国へ渡ったわけではありません。
エルフたちの中にも対立や意見の違いがあり、それぞれが中つ国へ行くかどうか、揉める過程がありました。
そんな中、ガラドリエルは中つ国へ行きたいと「切に」願いました。
彼女の想いはこうです。
「かの女は無防備の広大な地をその目で見て、その地で自分の思い通りに統治する王国が欲しいと切に望んだからである」
正直なところ、これは意外でした。
しかしこれを読んで、水鏡のシーンでの「試練」という言葉が、より納得できるものに思えたのです。
ガラドリエルの心の底には、強大な力を思うさま使い、周囲を思い通りにしたいという欲望があるということでしょう。
もちろん彼女はそれを自覚していますし、その欲望のままに動いたりはしませんでした。
それが試されたのがまさに水鏡のシーン、フロドに指輪を差し出された時だったのです。
ガラドリエルの性格と欲望
本記事を書く中で、ガラドリエルの人物像がよりはっきり見えてきた気がします。
すると、ドラマのガラドリエルの激しい性格も、まったくの創作ではないと思えました。
例えばドラマ第一話の冒頭、少女時代のガラドリエルが仲間の少年に殴りかかろうとするシーンも自然に感じます。
また、シーズン1最終話ではサウロンがガラドリエルと共にあろうとする意思を示します。
冥王の傍らに、女王がたたずむ未来を示唆する表現もうかがえます。(サウロンとガラドリエルの影が海面に映るシーン)
この流れも、ガラドリエルの心の底に支配欲があるからこそではないでしょうか。
ガラドリエルの欲望は、大きな力を持つものにとっては必ずあるものなのかもしれません。
その欲望のままに動くか、そうでないかで進む道は大きく別れてしまうのでしょう。
それは、「一つの指輪」を手にしようとするか、そうではないかの違いでもあります。
前者はサウロンであり、サルマンでした。
後者はガラドリエルであり、ガンダルフであったのではないでしょうか。
ガンダルフが指輪を持てない(受け取らない)理由もよく話題になりますが、このような視点からも説明ができるのではないかと思います。
ガンダルフが指輪を持てない理由について(過去記事)はこちら