「ロード・オブ・ザ・リング」に登場する姫エオウィンは、私が大好きな登場人物です。
まず、私の独断と偏見による「エオウィン推しポイント」をご紹介します。
・唯一、戦場で活躍する女性であること
・女性であるが故の窮屈さ、悔しさを体現していること
・恋心に正直に行動すること
・正直に行動した結果、幸せになること
映画を観ればわかりますが、エオウィンは戦場で大活躍しますよね。
この記事でお伝えしたいのは、まず、エオウィンが戦場に赴いた理由です。
また、あんなに瀕死の様子だった彼女が、映画の終盤でしっかり元気になっています。
彼女が回復したのにも、ちゃんと物語があるんですよー!
そもそもエオウィンはなぜ戦場に赴いたのか?
エオウィンが騎士の格好をして、ローハン軍に潜んだのはなぜでしょうか?
彼女はアラゴルンへの恋心が注目されがちなので、彼と同じ戦いの場にいたかった、
あるいは自分の想いが届かなかったので、絶望して死を求めた……
という一面も確かにあると思います。
しかし、私はそれだけではないと思うのです。
彼女は、ずっと長い間抱えてきた強い想いに駆られて、戦いに出たように感じます。
恋心は、最後の一押しというか、きっかけに過ぎなかったのではないかと。
アラゴルンに出会うずっと前から、エオウィンは苦しんでいたと思うんですよね。
それを象徴するキーワードとなるのが、このエオウィンの言葉です。
映画第二部でアラゴルンに「何を恐れるのか」と問われたエオウィンはこう答えます。
「檻です。」
原作でも、時間軸では後のことになるのですが、同じようなやりとりがあります。
この「檻」は、原作でガンダルフがエオウィンについて語る中にも出てきます。
「姫には己が人生がただ萎(しぼ)みゆく一方に思えたじゃろう。
寝室の壁は四方から迫り、野生のものを閉じ込めておく檻のように思えたことじゃろう。」
エオウィンは、戦いに出る男たちに匹敵する気力と勇気を持っていました。
しかし女性であるというだけでそれらを思いきり発揮することができず、
自分の役割がとても軽いものに思えて苦しんでいたのです。
このような境遇についに耐えきれなくなり、エオウィンは戦場に向かったのではないでしょうか。
また映画でも原作でも、彼女はメリーの戦の準備を手伝ったり、共に軍に潜んだりします。
これも、体が小さいというだけで軽んじられるホビットに、自分を重ね合わせたからだと思います。
ところで、エオウィンは戦いに出るセオデン王から、民を治めるように言われていました。
だから、結果的にエオウィンは与えられた義務を放棄し、王の命令に背いているんですよね……
それでもエオウィンがずっと抱いていた苦しみを思うと、彼女が身勝手・わがままとはどうしても思えないのです。
エオウィン生還のカギは王としてのアラゴルン、そして……?
さて、エオウィンは戦場でナズグルの首領を撃ち取るという大きな功績を上げますよね。
映画では、そこで姫自身も力尽きた、ように見えます。
劇場公開版では、この後エオウィンはほぼ登場しないのですが、終盤のアラゴルンの戴冠式ではしっかり元気な姿で登場します。
「あれ?」と思われた方もいるのではないでしょうか。
エクステンデッドエディションでは、エオウィンが回復する過程も少しですが描かれています。
野戦病院のようなところで、エオウィンのそばにいるのは兄のエオメルとアラゴルン。
この場にアラゴルンがいるのはなぜでしょうか?
映画ではわかりづらいですが、アラゴルンはただお見舞いに来ただけではありません。
彼は、エオウィンに治療を施しているのです。
そしてそれは、王である彼にしかできない治療方法です。
「アセラス」「王の葉」と聞いて、ピンと来るでしょうか?
映画第一部で、ちょこっと登場します。
まだフロドとサム、メリー、ピピンが一緒に旅をしていて、アラゴルンが加わって間もなくのころのことです。
フロドが冥界の王に襲われ、刀傷を負う場面がありますよね。
その傷をみたアラゴルンが、サム達に「王の葉」を探せと言います。
結局アラゴルンは自分でそれを見つけ、直後にアルウェンが登場することでこの葉の意味があいまいになっていますが……
実は「王の葉」は、アラゴルンが使うことで治癒効果を発揮する薬草なのです。
アラゴルンは、まさにこれを使ってエオウィンを癒しました。
その方法は、「王の葉」を手で揉みつぶし、お湯の中に入れる、というものです。
するととてもいい香りが立ち上り、それが心身に活力を与えます。
大事なのは、王であるアラゴルンがそれを行うことで、治療効果が生まれる点です。
「王の葉」は、王だけが扱える薬草なのです。
ほかの人が同じように扱っても、いい香りがする程度で、治療効果はありません。
そのためゴンドールでは長いこと、「王の葉」はそれほど重んじられてこなかったようです。
さて、「王の葉」によってエオウィンの体は癒され、彼女は目を覚ましました。
しかし、彼女の心はまだ救われていません。
エオウィンが本当の意味で回復し幸せになる過程については、次の記事でまとめたいと思います。
この記事の基となる章について
原作でエオウィンがアラゴルンとの会話の中で「檻」と口にする章は、
「王の帰還」上2「灰色の一行 罷り通る」です。
ここで、エオウィンはずっと抱いていた想いをアラゴルンにぶつけます。
またアラゴルンが王の葉を使ってエオウィンを治療したり、
ガンダルフがエオウィンについて語るのは「王の帰還」上8「療病院」です。