ゴラムは二重人格!?そして、「いとしいしと」が意味するものとは

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ビルボの前の指輪所持者であり、指輪を取り戻そうと、旅の行程で執拗にフロドに付きまとうゴラム。

原作では、ゴクリという名前で登場します。

フロドとは敵対するだけではなく、時に道案内をしたり、親愛とも呼べそうな態度を示すこともあります。

そんなゴラムですが、「二重人格なのでは?」という噂があります。

本記事ではその真相を、原作に基づいて徹底解説!

そして彼がしばしば口にする「いとしいしと」という言葉は、何を意味するのでしょうか。

まるで二重人格……自問自答するゴラム

映画「ロード・オブ・ザ・リング」では、ゴラムがフロドを助けようか、指輪を奪ってしまおうか、葛藤する印象的なシーンがあります。

そこでのゴラムは表情と口調が別人のように変化し、「二重人格!?」と思えてしまいます。

原作にも同じような場面があり、そこでは彼の人格の一方をスメアゴル、もう一方をゴクリとしています。

(スメアゴルとは、指輪に出会う前の彼の名前です。)

そしてどちらがどちらとは書いていないのですが、「薄青い光」と「緑の光」が、交互にその目に現れる、とあります。

二つの人格が現れてくるのは、ゴクリがフロドたちと出会ってからです。

それまでのゴクリはただ指輪を取り戻したいという想いだけで、ためらいなくフロドたちに襲い掛かってきます。

しかしフロドたちに情けのある扱いを受け、元の姿であるスメアゴルの人格が呼び覚まされたのでしょう。

それでも、二つの人格の会話をこっそり聞いていたサムは、そのどちらも良くは思いませんでした。

サムのスメアゴルに対する想いは、なかなかに複雑なものがあります。

サムは心の中で、スメアゴルを「こそつき」、ゴクリを「くさいの」と呼んでいます。

またフロドのご機嫌を取ろうとするスメアゴルを嫌悪し、以前の敵意がむき出しのゴクリのほうがましだった、とまで思うのです。

サムの印象にあるように、ゴクリの中の二つの人格は、「善VS悪」という単純なものではないようです。

そのことがゴクリのキャラクターを、人間臭い、ある意味とても魅力的なものにしているとは言えないでしょうか?

実際ゴクリに対しては、「クズ」「かわいそう」という声の一方で、「かわいい」とか「ゴクリが好き!」というものも少なくないのです。



ゴラムの言う「いとしいしと」って何?

ゴラムが口にする「いとしいしと」とは、指輪のことです。

ゴラムは指輪を使って悪事ばかりを働いたため、住んでいた村を追われてしまいます。

周りに話し相手がいなくなってしまった彼は、指輪に語り掛けるようになりました。

やがて彼はすっかり魅入られてしまい、彼の意識は指輪のことで占められているのです。

原作でゴクリは、フロドとサムに出会った初めのころ、自分のことを「わしら」と呼んでいます。

自分のことなのに、「わし」ではなく「わしら」。

これは、おそらく自分と指輪のことだと思われます。

孤独なゴクリにとって、指輪が唯一自分のそばにいてくれる存在だったことがよくわかります。

はじめ私は、「わしら」というのは、ゴクリの中の二つの人格のことだと思っていました。

しかし改めて原作を読み返してみると、ゴクリが「わしら」と言っていたのはフロドたちと出会った初めのころだけです。

その後は「わし」「スメアゴル」というようになるのです。

フロドたちと出会ったゴクリには変化が現れた、との記述もあります。

彼は「いとしいしとに話しかける代わりに、連れに向かって直接話しかけるように」なった、というのです。

これは、フロドたちと出会ってゴクリの中の「スメアゴル」が目覚めたことも少なからず影響しているのでしょう。

指輪を「愛しい」と思い、そして「しと(=人)」と人格化しているゴクリ。

ここから、彼が指輪に心を支配されていることだけでなく、彼の孤独がすさまじいものだったことがうかがえるような気がします。



あまり知られていない、スメアゴルの性格について

映画のゴラムがあまりに強烈なキャラクターとビジュアルであるため、スメアゴルだったころの彼に意識が向かないかもしれませんが……

原作に、スメアゴルの性格について興味深い記述があるのでご紹介します。

スメアゴルは、ホビットに近い種族です。

ガンダルフがフロドに語ったことを抜粋すると、彼らは「器用な手と音をたてぬ足を持った小さい人たち」でした。

その中でもスメアゴルは名の知れた一族のひとりであり、大家族で、裕福だったそうです。

そしてスメアゴルはその一族の中で、「もっとも詮索好きで、好奇心まんまん」でした。

彼が興味を持っていたのは「物事の根底と始原」です。

なんだか哲学的ですよね!

彼の意識は常に下に向いており、よく深い淵に飛び込んだり、地面にトンネルを掘っていました。

指輪を手に入れて故郷を追われてしまったスメアゴルが山の下の洞窟に向かったのは、このような気質が影響していたのです。

裕福で、探求心があり、器用さと行動力もあったスメアゴル。

指輪に出会わなければ、現実世界でいう研究者や哲学者、考古学者のようになって、人々の尊敬を集めていたかもしれませんよね。



おわりに

この記事は主に、「指輪物語」第二部「二つの塔・下」1「スメアゴルならし」2「沼渡り」を参考にしました。

フロドの情けに応えたいが、指輪への想いも断ち切れないスメアゴルの葛藤。

フロドへの親愛から、スメアゴルを嫌悪するサムの気持ち。

それらが言葉を尽くして表現されている、大変面白い箇所です。

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