ビルボが怖い……陽気な誕生祝いに隠された苦悩とは?

スポンサーリンク




ゴクリと出会って指輪を手に入れ、のちにフロドにそれを譲ったビルボ。

彼は邪悪な力を持つ指輪を手にしながら、悪事を働くことなく長い時を過ごします。

しかし、ビルボも指輪の影響を全く受けなかったわけではありません。

映画「ロード・オブ・ザ・リング」には、ビルボが怖い……と思わせる場面があります。

彼は指輪がかかわると、まるで人が変わったように攻撃的になるのです。

指輪がかかわると豹変!怖いビルボが顔を出す

映画の怖いビルボといえば、旅に出るフロドにミスリルの胴着を贈る場面でしょう。

フロドが胴着を着ようと上衣を脱いだとき、身に着けていた指輪がビルボの目に留まってしまいます。

ビルボは「私の指輪だ!」と言い、もう一度触らせてほしいと請うのですが……

フロドが拒否すると、ビルボの表情が一変、フロドにつかみかかろうとします。

それは一瞬のことで、ビルボはすぐに元の表情に戻り、涙を流してフロドに謝ります。

時間にしたらほんのわずかですが、ビルボの豹変ぶりが衝撃的なこのシーン。

映画を観ていて、思わずびくっとした方も多いことでしょう。

ところで、原作にはこのシーンはありません。

ビルボは旅に出るフロドに胴着と剣を贈りますが、その場面で指輪を巡るやりとりはありません。

原作で怖いビルボが現れるのは、誕生祝いの演説の後、指輪を手放すか否かでガンダルフともめる場面です。

演説の後すぐに旅に出ようとしていたビルボは、屋敷や財産とともに、指輪もフロドに残していくつもりでした。

しかしいざ置いていこうという時になって、急にそれができなくなってしまいます。

そしてビルボは、指輪を手放すことを勧めるガンダルフと険悪な雰囲気になります。

この時のビルボは、いらいらし、声がとげとげしくなり、目には怒りの色が浮かび、顔が険しくなった、とあります。

やがてビルボはガンダルフに対して声を荒げ、刀の柄に手をかけさえするのです。

映画ほど劇的な変化ではありませんが、ビルボの人格が変わっていくのがよくわかりますよね。

原作は映画よりガンダルフとの会話が長く、怖いビルボがじわじわと姿を現してくる印象があります。




ビルボには指輪への耐性もあった?ガンダルフがホビットを称賛する理由

ガンダルフはビルボの指輪のことを知っていながら、その正体を長いこと見抜けませんでした。

それは、指輪を持っているビルボが、それを使って大きな悪事を働かなかったからです。

本人に自覚はありませんでしたが、ビルボには指輪の魔力に抵抗する強さもあったのです。

ガンダルフがついに指輪の脅威に気づくのは、前項の問答の中でのことです。

指輪を手放すか否かでもめた末、ビルボが口にした言葉がガンダルフを愕然とさせました。

「これは私のいとしいもの。そう、いとしいものなんだ」

それは、前の指輪所持者、ゴクリが言っていたことと同じでした。

二人が同じ言葉を口にしたことで、ガンダルフは指輪の恐ろしい力に気づくのです。

その後、ガンダルフの脅迫と言えなくもない説得によって、ついにビルボは指輪を手放すことができます。

この指輪を自分から手放す、というのが大変に重要な行為で、のちにガンダルフはフロドにこう語ります。

「わしの知る限り、指輪の歴史の中ではビルボだけが、それを実行した」

指輪は強大な力で持ち主の心を支配してしまいます。

ビルボはそんな指輪を長い間持ちながら、大きな悪事に手を染めず、最後には自分の意志でそれを手放しました。

同じホビット族であるフロドが指輪を運ぶ役に選ばれたり、ガンダルフが彼らを称賛する理由もここにあるのです。




陽気でにぎやかな誕生祝い。その真の目的とは

映画冒頭のビルボの誕生祝いは、ひたすら陽気でにぎやか、少しの暗さもうかがえません。

しかしその主催者であるビルボは、人知れず苦しんでいました。

彼にとって、この盛大な宴会はどんな意味があったのでしょうか?

ビルボはこの誕生祝いの後、旅に出て、二度と戻らないことを決めていました。

そのために家財の処分や、フロドに屋敷と財産を譲るための手続きをすっかり済ませていたのです。

そもそも、なぜ旅に出ようと思ったのか、というところにも指輪がかかわってきます。

この時ビルボは111歳、ホビットにしてはかなりの高齢でした。

それは本来なら喜ばしいことですが、ビルボはガンダルフにこう打ち明けます。

「なんというか、薄っぺらになったという感じ……引っ張って、引き伸ばされた感じなんですよ」

皆が徳と見ていた長寿ですが、ビルボは喜んではいませんでした。

それが、指輪の力で引き延ばされている命だったからなのは明らかです。

ビルボのセリフはこう続きます。

「私には、変化というか、何かが必要なんです」

ビルボは自分の生に何か不自然なものを感じ、旅に出ることを決めたのです。

そして、指輪を手放すことについてもビルボは悩んでいました。

この誕生祝いには、村のすべての住民が招待されたのですが、ビルボはその全員に贈り物を渡しています。

(自分の誕生日にみんなに贈り物をするのが、ホビット族の習慣です。)

それについて、ビルボはガンダルフにこう語ります。

「今日の宴会の主旨というのは、つまるところここにあったのだから」

「誕生祝いをどんどんくれてやり、そうすることでこれを手放す気持ちを楽にしようとしたわけなんだ」

ビルボは、指輪ときっぱり決別するために、盛大な誕生祝いを催したのでした。

そんな背景を知ると、映画のビルボの表情にも、何か違ったものが読み取れるような気がしませんか……?

おわりに

この記事は、主に「指輪物語」第一部「旅の仲間・上」1「待ちに待った誕生祝い」を参考にしました。

ビルボが誰にどんな贈り物をしたか、それはなぜか、贈られた側の反応など、細かいところがとても面白い章です。

スポンサーリンク
スポンサーリンク




スポンサーリンク




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク




コメントの入力は終了しました。