同じ屋敷に住み、大変親密な関係にあるように見えるビルボとフロド。
映画を観ても、ビルボはフロドのことをかわいがり、フロドはビルボを慕っていることがよくわかります。
そもそも、二人はいったいどんな関係なのでしょうか?
映画「ロード・オブ・ザ・リング」では、その点があまりしっかり説明されません。
二人の外見から、「祖父と孫」だと思われる方もいるようです。
原作では、ビルボとフロドの関係についての情報はありますが、少しずつあちこちに点在しています。
さらにはフロドとメリー、ピピンとの関係についても……
それらを拾い集めて、まとめてみました。
フロドはビルボの養子。でもそれだけじゃない?
フロドは、ビルボの養子です。
ビルボは99歳になったとき、フロドを養子にして、自分の屋敷に迎え入れています。
この時、フロドは20代でした。
二人は法的な「親と子」ですが、現代の感覚だと、「祖父と孫」以上の年齢の差がありますね。
また、ビルボとフロドはもともと親戚関係でもあります。
原作には、ビルボにとってフロドは「いとこたちの中で一番年上で、一番のお気に入りだった」とあります。
ただしここで言う「いとこ」は、「親同士が兄弟姉妹」という関係ではありません。
厳密には、フロドの母親がビルボのいとこでした。
そして、フロドの父親もビルボの「またいとこ」でした。
「またいとこ」とは、「はとこ」と同じ意味で、いとこ同士の子供同士の関係を言います。
なんだかややこしいですが、フロドはつまり、父方から見ても母方から見ても、ビルボと親戚だということです。
このフロドの実の両親は、フロドが幼いころに事故で亡くなっています。
父親はドロゴといい、バギンス家です。
母親はプリムラといい、ブランディバック家の出身です。
二人は川で舟遊びをしていて、溺死してしまいました。
この事故についてホビット村では、ドロゴの体の重みで船が沈んだとか、プリムラがドロゴを押したとか、長年噂話の種になっています。
映画「ロード・オブ・ザ・リング」では、ビルボとフロドの関係性がわかる情報がほぼありません。
まずガンダルフがフロドと話すとき、「ビルボ養父さん(とうさん)」という表現をします。
また、誕生祝いの途中、ビルボがフロドに話す中に「お前を親戚の中から引き取った……」という言葉が出てきます。
どちらも、うっかりすると見落としてしまいそうなほどあっさりです。
それでも一応、「フロドはビルボの養子で、親戚関係もある」という情報がきちんと盛り込まれているのです。
サックビル=バギンスって誰?どうしてビルボは彼らを避けるのか
フロドがビルボの養子になったことで、大変面白くない思いをした人々がいます。
それが、サックビル=バギンス夫妻です。
映画では、ビルボがサックビル=バギンスという親戚を避ける場面があります。
まず、自分の屋敷にいたビルボは、訪ねてきた彼らに対して居留守を使います。
それから誕生祝いのさなか、彼らの姿を見つけたビルボは、物陰に隠れて顔を会わせまいとします。
ビルボがこんなに嫌うサックビル=バギンスとは何者なのでしょうか?
「サックビル=バギンス」というのは姓で、夫妻の名はそれぞれオソ、ロベリアといいます。
オソは、フロドがビルボの養子にならなければ、ビルボの後継になるはずでした。
彼らは特に、ビルボの屋敷を自分たちのものにしたいと思っていました。
しかしフロドが養子になったことで、その望みがなくなってしまったのです。
だから彼らはビルボと険悪なだけでなく、フロドのことも「憎んでも余りある」ほどに思っています。
その後、旅に出るフロドはロベリアに屋敷を売り渡しています。
原作では、ビルボの誕生祝いからフロドが旅に出るまでは17年の歳月が流れており、この間にオソは102歳で亡くなっています。
ロベリアは息子のロソと屋敷に移り住むのですが、この時にすでに100歳になっていたということです。
フロドとメリー、ピピンの関係は?みんなつながりがあった!
指輪を葬る旅に同行するメリーとピピン。
映画でこの二人とフロドは、初めから仲のよい友人という雰囲気ですね。
原作でも、二人はフロドの親友となっています。
そしてこの3人もまた、さかのぼっていくとつながりがあります。
まずはフロドとメリーについて。
メリーの本名は、メリアドク・ブランディバックといいます。
原作には、前項のロベリアが、フロドにこう悪態をつく場面があります。
「お前はここのもんじゃないんだよ。お前はバギンスじゃない……ブランディバックじゃないか!」
ブランディバック家は、フロドの母親の出身ですね。
彼らが栄えているのはホビット村ではなく、少し離れたバック郷というところです。
フロドも、子供のころはバック郷に住んでいました。
原作では、フロドはホビット村を旅立つとき、表向きは「バック郷に戻る」ということにしています。
そして、フロドの新しい住まいを手配したのはメリーです。
周囲にとっては、フロドがバック郷に戻ることも、ブランディバック家であるメリーがその世話をすることも、ごく自然なことだったのです。
次にフロドとピピンについて。
映画では、「踊る子馬亭」でピピンがビールで気分良くなり、フロドと自分の関係をしゃべってしまいます。
バギンスの名を隠しておきたかったフロドは、ここで大変焦るのですが……
この時のピピンのセリフは、このような感じです。
「フロド・バギンスは、俺の母方のまたいとこさ」
フロドとピピンはまたいとこ、つまりはとこの関係にあるということです。
最後にメリーとピピンについてですが、この二人はいとこ同士です。
これは原作にも出てこない、別の資料からの情報なのですが……
それによれば、フロド、メリー、ピピン、そしてビルボも、さかのぼっていくと「トゥック翁」という人物にたどり着くようです。
フロドとメリー、ピピン、さらにはビルボも、ご先祖でつながっていました。
ホビット族はあまり自分の村から出たがらない性質があるので、誰もかれも、さかのぼっていくとどこかでつながっているのかもしれません。
おわりに
この記事は、「指輪物語」第一部「旅の仲間・上」1「待ちに待った誕生祝い」~3「三人寄れば」を参考にしています。
サックビル=バギンス夫妻やフロドの実の両親については、人々の噂話という形で出てくることもあります。
そこではそれぞれの関係のほか、誰が誰をどう思っているか、というところもわかって面白いですよ!