映画「ロードオブザリング」でかっこいいと評判のアラゴルン。
かくいう私も、指輪物語を読んで映画を観た10代の時は彼に夢中になりました。
王家の血筋であり、作中ではフロドを助け、サウロンの勢力と戦う人々の先頭に立ち、最後は王になるという超重要な役どころの彼。
いったい、どんな人物として描かれているのでしょうか?
映画と原作で、その印象は異なります。
アラゴルンは何歳?意外と高齢、だけど外見的なイメージは別
アラゴルンは、フロドたちと出会った時に87歳です。
アラゴルンは人間ですが、現実世界の87歳をイメージしないほうがいいでしょう。
指輪物語の世界では人間もいろいろで、アラゴルンはその王家の血筋のために、一般の人間たちよりも寿命が長いのです。
では、外見的にはどうだったのでしょうか?
原作でフロドがアラゴルンと初めて出会った場面に、彼の外見的な描写があります。
まとめると、「血の気のない厳しい顔、鋭い灰色の目、半白のもしゃもしゃ頭」。
半白、ということは頭髪は白髪交じりだったのでしょう。
そして、その後フロドたちと言葉を交わす中に次のようなセリフがあります。
「私は見かけよりも年寄りなのだ」。
以上から、私はアラゴルンの見た目は現実世界の40後半~50代をイメージしています。
性格は?原作ではよくしゃべり、笑うアラゴルン
映画・原作ともに、アラゴルンがフロド、サム、メリー、ピピンと出会うのは、ブリー村の宿屋「踊る子馬亭」です。
ここでフロドは事故的に、大勢の前で指輪をはめて姿を消してしまい、騒ぎを起こしてしまいます。
それをきっかけにアラゴルンはフロドに近づき、旅に同行することになります。
その一連の過程でうかがえるアラゴルンの人柄は、映画と原作ではずいぶん印象が違うように私は思いました。
映画のアラゴルンは、ちょっと荒々しい感じがします。
注目を集めてしまったフロドを人々の好奇の目から遠ざけるためとはいえ、フロドの首根っこをつかんだり、いきなり剣を抜いたり、口調もぶっきらぼうで多くを語りません。
指輪を守るために周囲を警戒しているはずのフロドが、このアラゴルンについていくことをあっさり決めてしまう展開には、正直ちょっと無理があるなと思ってしまいました。
一方、原作ではこの最初の出会いで、アラゴルンとフロドたちはたくさん言葉を交わします。
その中でフロドたちは、アラゴルンが信用できる相手なのかを探っていくのです。
この時のアラゴルンは映画の印象より、紳士的で言葉遣いは丁寧、ユーモアもあり、時に声を上げて笑ったりもします。
結局、ガンダルフが宿屋の主人に託した手紙が見つかり、その中の一節をアラゴルンが知っていたことで、彼が信用できる相手であることがはっきりします。
しかしその前から、フロドはアラゴルンを味方だと信じていました。
フロドはアラゴルンにこう言います。
「あなたが間者(スパイ)なら、見かけはもっとよく、感じはもっと悪いだろうと思うのです」
これにアラゴルンはこう答えます。
「私は見かけは悪く、感じはよいということですな?」
そして、声をあげて笑います。
アラゴルンはフロドたちと言葉を交わす中で自分の人柄を示し、信頼を勝ち得たということになります。
(もっとも、メリーやピピン、特にサムがアラゴルンを完全に信用するには、まだ少し時間がかかるのですが……)
恋人アルウェンの存在感について。原作ではほぼ出番なし!?
アラゴルンを語るうえで欠かせないのが、エルフの姫アルウェンでしょう。
アラゴルンの恋人であり、比類なき美しさという彼女。
しかしアルウェンは、原作ではびっくりするくらい登場しませんし、セリフもほぼありません。
映画では傷ついたフロドを助けるために馬を駆ったり、アラゴルンとのキスシーンがあったり、アラゴルンのもとを離れるかどうかで悩んだり、何かと登場回数が多いです。
これはアラゴルンの恋人であるという立場や、数少ない女性の登場人物として、映画では花を添えるために効果的な演出だと思います。
特に、傷ついたフロドを馬に乗せて追手から逃げるシーンは私も大好きです。
しかし原作では、追手に刺されて重傷を負ったフロドを助けるエルフは登場しますが、それはグロールフィンデルという男のエルフです。
原作ではアルウェンはほとんど登場しませんが、その美しさは大いに強調されます。
また彼女は美しいだけでなく、「女王の風格を持ち、長い年月多くを見てきた人の思慮と知識が感じられる」と表現されます。
フロドが初めてアルウェンを目にした時の印象には、「若々しいのに、若くはない」とも。
実はこの時点で、アルウェンは3000年近く生きています。
私は映画の活躍するアルウェンも好きですが、原作では登場シーンやセリフがない分、彼女の姿がより神秘的・荘厳にイメージされるような気がしています。
おわりに
今回はアラゴルンについてまとめてみました。
本記事の内容は、主に「指輪物語」第一部「旅の仲間・上」の9「踊る子馬亭で」10「馳夫」、「旅の仲間・下」の1「数々の出会い」を参考にしました。
「馳夫」は、ブリー村のホビットたちの間でのアラゴルンの呼び名です、
原作ではこれを「はせお」と読ませ、映画の字幕では「ストライダー」とルビがふられています。
個人的には、アラゴルンとフロドたちのやりとりの最中にちょいちょい登場する、宿屋の主人バタバー氏のキャラクターがお気に入りです。